春になると、温かくて気持ちの良い日差しの中で、愛犬が窓辺でリラックスしている光景をよく目にします。
そして、いつもよりも頻繁にあくびをする姿も見かけるかもしれません。
ただ単に眠たそうに見えるだけではなく、実は犬が表現する様々な意味があることをご存知でしょうか?
例えば、眠くないのにあくびをする、犬同士が遊んでいるときに急にあくびをするなど、犬たちが独自のコミュニケーション手段として使用していることもあります。
今回は、この「あくび」に関する話題について取り上げたいと思います。
犬があくびをする理由
犬があくびをするとき、あなたはどんな気持ちになりますか?
眠いだけだと思っていませんか?
実は、犬のあくびにはさまざまな意味があります。
犬は言葉で話せないので、体や顔で感情や状況を伝えようとします。
その一つが「カーミングシグナル」と呼ばれるボディランゲージです。
カーミングシグナルとは、自分や相手を落ち着かせたり、争いを避けたりするために使う合図です。
あくびもカーミングシグナルの一種であり、緊張や不安、不満、服従、謝罪などの気持ちを表すことがあります。
例えば、知らない人や動物に会ったときや苦手な場所に行ったときにあくびをする場合は、不安や緊張を和らげるためかもしれません。
また、飼い主さんから叱られたり怒られたりしたときにあくびをする場合は、服従や謝罪の意思表示かもしれません。
逆に、嬉しいときや楽しいときにあくびをする場合は、自分や周囲の興奮度を下げるためかもしれません。
さらに、飼い主さんがあくびをしたらつられてあくびをする場合は、「伝染性のあくび」と呼ばれる現象であり人間と同じように共感力が高い証拠かもしれません。
もちろん、眠いときや疲れているときに生理的な反応としてあくびをすることもあります。
また、歯垢や歯石が溜まって口の中が不快だったり歯周病や顎関節症などの病気が原因で口を大きく開ける動作が出ることもあります。
そのような場合は早めに動物病院で診てもらうことが必要です。
愛犬のあくび仕草から気持ちや健康状態を読み取ることができれば、より良い関係を築くことができます。
日常的に観察して愛情深く接してあげてください。
あくびの種類
以下は、愛犬があくびをする時の意味と、その状況に対するアドバイスについての情報です。
ドッグランで楽しく走り回った後のあくび
ドッグランでは愛犬が思いっきり走ってストレス発散や健康増進に役立ちます。
しかし、運動量が多すぎると血液中の酸素が減ってしまい、脳へ十分な酸素を送るためにあくびが出ることがあります。
この時、愛犬は体力の限界を感じているサインなので、無理をさせずに休憩させてあげましょう。
また、普段から適度な運動習慣をつけることで、ドッグランでも長時間楽しめるようになります。
怒られている時のあくび
怒られた時のあくび 叱られた時にあくびをすると、「ごめんなさい」という気持ちや「やめてください」という不快感を表しています。
これはカーミングシグナルと呼ばれる自分や相手を落ち着かせようとする合図です。
叱られすぎるとストレスや恐怖心から心身に影響が出ることもありますので注意しましょう。
しつけは必要ですが、褒めたり撫でたりして愛情表現も忘れないようにしましょう。
そうすれば愛犬も喜んで従ってくれます。
シャンプーやトリミング中のあくび
シャンプーやトリミング中にあくびをする場合は、自分や相手を落ち着かせようとするカーミングシグナルというサインである可能性が高いです。
犬は不要な争いを避けるためにカーミングシグナルというボディランゲージを使います。
シャンプーやトリミングが苦手な犬は、「嫌だな」「やめてほしい」という不安や不満をあくびで伝えているのかもしれません。
そのようなときは、無理に長時間行わずに短時間で終わらせたり、ご褒美や声かけで気分転換したりしてあげましょう。
また、シャンプーやトリミングの前後には十分な休息や運動を与えてあげることも大切です。
散歩中のあくび
散歩中に他の犬と出会った際にあくびをする場合、犬は相手に「争うつもりはない」というカーミングシグナルを送っています。
カーミングシグナルとは、自分や相手を落ち着かせるために犬が見せる行動のことで、犬が平和を好む動物であることを表しています。
あくびをすることで、自分の気持ちを抑えたり、相手に対して敵意や争うつもりがないことをアピールし、不要な争いごとを避けようとしているのです。
しかし、あくびは犬のカーミングシグナルの中でも最もよく知られているものであり、他にも多くの種類があります。
また、あくびは人間から犬へ伝染する現象も確認されており、そのメカニズムはまだ解明されていません。
散歩中に犬があくびをしたら、その背景にどんな気持ちや意味があるのか考えてみましょう。
犬のあくびでわかる体調不良の可能性
あくびが多いと危険な理由
あくびは体内の酸素や糖分のバランスを調整するために出るものですが、あくびが増えたり、いつもと違ったりすると、何か病気のサインかもしれません。
犬の健康を守るためにも、気になる場合は早めに獣医さんに診てもらいましょう。
あくびが多いと考えられる病気
低血糖
血液の中の糖分が減少する事で、脳の働きが低下する状態です。
脳の働きを活性化させるために酸素を送り込もうとしてあくびが増えます。
特に、チワワなどの超小型犬や子犬は低血糖になりやすい傾向があります。
低血糖になると、震えやけいれん、意識障害などの重篤な症状を引き起こす可能性があります。
貧血
貧血とは血液中の赤血球やヘモグロビンが減少する事で、酸素を運ぶ能力が低下する状態です。
貧血になると酸欠状態になるため、あくびが多くなります。
一概には言えませんが、元気が無く動きたがらない、おしっこの色が赤い、呼吸が早い、歯茎など口腔内が白っぽくなるなどの症状が現れたら注意が必要です。
貧血の原因は様々ですが、寄生虫や出血性胃腸炎、癌や腎臓病などの重大な病気もあります。
うつ(鬱)
うつとは心の不調で、気分や感情が落ち込んだり抑うつしたりする状態です。
人間だけでなく、動物も心の不調にかかる事があります。
長時間強いストレスを感じたり、長時間のお留守番でひとりぼっちの時間が長い、お散歩に行けない状態が続いている、スキンシップが足りないなど、原因はその子によって様々です。
うつになると元気や食欲が無くなったり、あくびばかりしたりします。
また、自傷行動や攻撃性を示す場合もあります。
うつは放置せずに早期治療を行う事で改善される可能性が高まります。
歯のトラブル
歯周病や虫歯は人間だけでなく、動物も罹患する可能性があります。
歯周病は歯垢や歯石から始まって歯肉から歯根まで進行してしまいます。
虫歯は細菌や餌残しなどから始まって神経に達すると激しい痛みを引き起こします。
歯の不快感や、歯が痛む時など、いつもと異なるあくびをする事があります。
あくびをしながら「キャン!」と鳴いたり、声を出すなどの症状が出たら、もしかしたら歯が痛いのかもしれません。
歯のトラブルは口臭や食欲不振だけでなく、全身の健康にも影響します。定期的に歯磨きをして予防しましょう。
まとめ
「犬のコミュニケーション方法」であるカーミングシグナル。
あくびはよく見られるカーミングシグナルの一つで、あくびをしてストレスを解消したり、謝罪や服従の意思を示したり、嫌なことや怖いことから逃れたりしようとします。
しかし、飼い主さんがカーミングシグナルの意味を知らなかったり、無視したりすると、犬はカーミングシグナルを出しても効果がないと感じてしまいます。
その結果、犬は飼い主さんに対して不信感や不満を抱いたり、カーミングシグナルを出すのをやめてしまったりするかもしれません。
愛犬が眠そうでもないのに「あくび」をしていたら、「どうしたの?」「ごめんね」「やめて」と言っているのかもしれません。
その時は、愛犬の気持ちに寄り添ってあげてください。
カーミングシグナルを理解する事で、愛犬ともっと仲良くなれて、もっと楽しく過ごせるかもしれません